1日目
ヒトを寄せ付けない島
伊豆七島を全部行ってみよう、と若い頃思い、着実に実践してきた。しかしまだ利島と青ヶ島だけ未踏である。そこでこの機会にいちばん遠くしかもなかなかヒトを寄せつけない、といわれている青ケ島まで行ってみることにした。欠航の多い連絡船「あおがしま丸」だがその日は出航するという。ようしチャンスとばかり乗り込んだ。目的の島まで約四時間。
海にはさして大きな波はないが、台風の置き土産である「うねり」がまだ残っている。
やがて青ケ島が見えてきた。遠目からは波間からいきなり飛び出して屹立しているかんじである。そのむかし火山の隆起でできた島、という歴史をその形がわかりやすく証明しているようだ。
殆ど絶壁だけがまわりを取り囲んでおり、接近するものはすべて拒絶しているような、いささかおどろおどろしい「魔の島」のイメージだ。(写真:椎名 誠)
海にはさして大きな波はないが、台風の置き土産である「うねり」がまだ残っている。
やがて青ケ島が見えてきた。遠目からは波間からいきなり飛び出して屹立しているかんじである。そのむかし火山の隆起でできた島、という歴史をその形がわかりやすく証明しているようだ。
殆ど絶壁だけがまわりを取り囲んでおり、接近するものはすべて拒絶しているような、いささかおどろおどろしい「魔の島」のイメージだ。(写真:椎名 誠)
青ヶ島、上陸
港は南向きにひとつしかない。接近していくにつれてわかってきたのは、波高はそう巨大ではないものの、うねりが直接ぶつかっているので桟橋のまわりは常に海面が大きく複雑に上下しているようだ。こういう条件のところで桟橋に船を横づけするのは並大抵ではないだろう、とシロウト目にもわかる。
船は激しく揺れながら時間をかけてじりじり接近していくが、ときおりうねりによっていきなり左右に大きく傾く。二、三度船体が殆ど斜めになったようだった。なんとかブリッジをつけたが、桟橋の上の係員が十人ほどで抑えても、船と一緒ブリッジが三メートルほど左右に動いている。ゆさぶられてブリッジから落ちたら桟橋と船に挟まれて死ぬしかないだろう。脱出するようにしてあおがしま丸から降りることができた。
上陸成功。しかし、そのあと知ることになるのだが、本当の成功は、この島での用事がすんで帰路の船に乗れることができたらのこと、という荒海の中に浮かぶ孤島の厳しい現実だった。(写真:椎名 誠)
船は激しく揺れながら時間をかけてじりじり接近していくが、ときおりうねりによっていきなり左右に大きく傾く。二、三度船体が殆ど斜めになったようだった。なんとかブリッジをつけたが、桟橋の上の係員が十人ほどで抑えても、船と一緒ブリッジが三メートルほど左右に動いている。ゆさぶられてブリッジから落ちたら桟橋と船に挟まれて死ぬしかないだろう。脱出するようにしてあおがしま丸から降りることができた。
上陸成功。しかし、そのあと知ることになるのだが、本当の成功は、この島での用事がすんで帰路の船に乗れることができたらのこと、という荒海の中に浮かぶ孤島の厳しい現実だった。(写真:椎名 誠)
趣味は焚き火キャンプ、どこか遠くへ行くこと。