吉祥寺のカフェやショップで、 自分だけのお気に入りを見つける1日さんぽ
吉祥寺のカフェやショップで、 自分だけのお気に入りを見つける 1日さんぽ
新宿からJR中央線快速で15分。多摩地区東端に位置する吉祥寺は、東京でも「暮らしてみたい街」として多くの人に愛されるエリア。華やかな駅周辺を少し離れると武蔵野の歴史と自然に育まれた美しい風景が広がり、時間もどこかゆったりと流れていくかのよう。個性あふれるカフェやショップを訪ねれば、このまちの上質なカルチャーも感じられます。せかせかとした日常を少し離れて、心をうるおす小さな旅を楽しんでみませんか。
JR吉祥寺駅から徒歩10分ほど。緑豊かな井の頭恩賜公園の一角に「井の頭自然文化園」があります。こちらは1942(昭和17)年に開園した歴史ある都立動物園。井の頭恩賜公園の3分の1を占める約35000坪の敷地に、170種類を超す動物たちが飼育されています。ヤクシカやイノシシがのんびりとくつろぐ大放飼場や、カピバラやヤギなどマイペースでかわいい動物たちがいるエリアなど心癒される空間が広がっています
放し飼いのリスたちと触れあえる「リスの小径」
お目当てにしたいのが、ニホンリスたちが自由に暮らす空間に入れる通り抜けタイプのケージ「リスの小径」。二重のドアを入ると、そこは大きな木々が茂り小川が流れるリスの森。小径を歩けば、すぐそばで枝を渡ったり、地面を走ったりする元気なリスたちを間近に観察することができます。リスが暮らせる森は多摩エリアでも日本全国でも減りつつあり、こちらの園ではニホンリスを計画的に増やす計画にも取り組んでいるそうです。
園内には長崎の平和記念像を制作した彫刻家・北村西望の作品200点あまりを展示する「彫刻園」、身近な野生の生き物を観察できる「いきもの広場」など見どころも豊富。彫刻作品はアトリエ館や彫刻館に加えて周辺の木立の中にも展示されているので、アートピクニック気分でめぐるのもよさそう。「フード&ギフトショップ こもれび」にはナッツたっぷりの「リスの小径アイス」もあって、木陰でひと休みできますよ。
- 住所: 東京都武蔵野市御殿山1-17-6
- TEL: 0422-46-1100
- 営業時間: 9:30~16:00(閉園17:00)
- 定休日: 月曜、祝日の場合は翌日休
- 公式サイト: https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ino/ ※入園料400円
「八十八夜」で季節の露地野菜たっぷりのランチを味わう
井の頭自然文化園から吉祥寺駅方向に6分ほど歩いた場所に「八十八夜」があります。こちらは、おいしくてからだにやさしい国産食材にこだわるダイニング。天然のウォールナット材をふんだんに使った明るくてナチュラルな雰囲気の店内で、季節感いっぱいのランチが味わえます。
ランチで好評なのが「八十八夜旬野菜のサラダプレート」です。大振りの皿の上には、有機露地野菜を中心にその日に入った25種類ほどの生野菜・茹で野菜がたっぷり。野菜をすり込んだ自然な甘みの自家製ドレッシングで味わいましょう。店内で焼き上げるパンまたは五穀ご飯、お惣菜もついてボリュームも満点。カラフルで力強い味わいの野菜たちに、からだの中からリフレッシュできそうなひと皿です。
ランチは「たっぷり野菜のカレープレート」、「特製から揚げプレート」など全5種類。このほか自家製スイーツやドリンクもあって、カフェとして利用するのもよさそう。とくにきざみショウガにスライスしたショウガ、アガベシロップと数種類のスパイスでつくる「自家製スパイスジンジャー」は暑い日に元気をくれる一杯。肉料理や魚介料理、BIOや国産のワインでもてなしてくれ、夜まで自由なスタイルでくつろげますよ。
- 住所: 東京都武蔵野市御殿山1-2-1 御殿山デュープレックスR'S 2階
- TEL: 0422-24-9490
- 営業時間: 11:00~21:30(閉店22:00)
- 定休日: 月曜(祝日の場合は営業)
- 公式サイト: http://88ya.jp/
おもにヨーロッパで買い付けるアンティークやヴィンテージ製品にも定評があります。店内では1970年代の食器類4000円~などを扱うほか、フィンランドのアルテック社や英国アーコール社のヴィンテージ家具も。お店のすぐ近くには姉妹店「CINQ HOME」があり、こうした家具類を多く並べています。アンティークショップが多いことでも知られている吉祥寺。古きよきものをテーマにしたさんぽも楽しめそうですね。
- 住所: 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-3 グリーニィ吉祥寺1階
- TEL: 0422-26-8735
- 営業時間: 11:00~19:00
- 定休日: 無休
- 公式サイト: http://cinq.tokyo.jp/
土をこねて土に向き合う「陶芸教室むさしの」で器づくり
「CINQ」から駅前のにぎわいを通り過ぎ、JR中央線の高架に沿うように徒歩20分。静かな住宅街の路地に「陶芸教室むさしの」があります。ちょっと意外な場所ですが、一歩中に入るとそこは窯やロクロが並ぶ本格的な陶芸工房。定期的に通う生徒や近隣に住む陶芸作家たちが思い思いの時間に訪れ、静かに作陶にはげんでいます。
ビジターに好評なのがおよそ2時間で完成する「手びねり陶芸体験」。スタッフに「玉作り」と「たたら作り」という2種類の基本の成型技法を教わりながら、初心者でも気軽に作陶にチャレンジできます。体験は粘土をワイヤーで巻き取り、こねるところからスタート。ひんやりとした土に触れていると不思議と心が落ち着いてくるかのよう。その後は手まわしのロクロやさまざまな道具を使いながらゆっくりと形を作っていきます。
完成したら、4色の釉薬から好みの色を指定して体験は終了。後日、スタッフが低温で素焼きし、釉薬を塗り、本焼きを施して完成させたうえで連絡をくれるので、受け取りに行くか送ってもらうかを選びましょう。陶芸は土の種類や焼き方によっても色彩や表情が異なるのだそう。工房内にはサンプルもたくさんあるので、奥深い陶芸の世界を見学させてもらうのも楽しそうです。
- 住所: 東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-21
- TEL: 0422-20-4881
- 営業時間: 10:00~18:00
- 定休日: 月曜
- 公式Instagram: https://www.instagram.com/tougei6340/ 手びねり陶芸体験3000円~(要電話予約)
11色のクリームソーダが名物の老舗喫茶
「ゆりあぺむぺる」へ「陶芸教室むさしの」から徒歩14分。JR吉祥寺駅前へ戻ってきたら、1976年創業の喫茶店「ゆりあぺむぺる」でひと休みしましょう。レンガの壁、横浜のクラシック家具店・ダニエルが手がけた革張りの椅子、アールヌーヴォーのランプなどインテリアや内装はほぼ創業当時のまま。毎日欠かさずワックスで磨き続け、独特の鈍い光を放つ床も時代を感じさせ、昭和の吉祥寺にタイムスリップするような気分が楽しめる喫茶店です。
近年、若い世代に好評なのが、甘さ控えめでコクのある大きなアイスクリームがのったクリームソーダ。創業時からの名物「ゆりあぺむぺるクリームソーダ」は、ザクロ風味で鮮やかなオレンジ色。時を経るごとにレシピが増えたというラインナップは現在なんと11種類。ライトブルーでライチ風味の「みずいろの少女」、すみれ色ですみれ風味の「バイオレット」など見た目も名前もロマンチックなソーダはどれにしようか悩んでしまうはず。
クラシカルなスイーツなら、生クリームとバニラビーンズたっぷりの自家製プリンはいかが?しっかりと固めの生地にほろ苦いカラメルがよく合い、長年のファンも多いそうですよ。看板のコーヒーは、4種類のブレンドはハンドドリップで、6種類前後のストレートはサイフォンで淹れるスタイル。ランチやパスタなど食事メニューも豊富で、吉祥寺での行きつけにしたくなる居心地のいい一軒です。
- 住所: 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-1-6
- TEL: 0422-48-6822
- 営業時間: 11:30~19:45 (食事ラストオーダーは19:00、金・土曜、祝前日は~21:45、食事ラストオーダー21:00)
- 定休日: 無休
- 公式Instagram: https://www.instagram.com/yuriapemuperu/
文房具&雑貨好きが通う「36 Sublo」で新作をチェック
吉祥寺さんぽもそろそろ終盤。「ゆりあぺむぺる」から歩いて6分ほど、東急百貨店吉祥寺店の近くにある「36 Sublo」にも立ち寄ってみましょう。こちらは2004年に吉祥寺の路地裏にオープンした文具と雑貨のお店。現在は、吉祥寺通り沿いの古いビルの2階に店を構えています。最近では海外からやってくるファンも多いそうで、10人も入ればいっぱいの小さな店内はいつ訪れても雑貨好きの人々でにぎわっています。
人気の秘密は、スタッフがイラストレーターやデザイナーとつくるオリジナル商品が豊富なこと。値札シールをベースにしたラベラーロールシール、しましま柄の包装紙、カラフルなマスキングテープ、ユニークなはんこ類など「36 Sublo」らしい世界が広がります。「おみせやさんシリーズ」、「人アルファベットシリーズ」などシリーズ化されているものもあり、ひとつひとつ見ているだけで時間を忘れそう。
「36 Sublo」ではスタッフがさまざまな展覧会や展示会をめぐり、この店らしいと感じる商品を探しているそう。店頭・ネットショップともに随時新作が入荷し、オリジナル以外にもかわいい、どこか懐かしい、くすっと笑える文具や雑貨が豊富にそろいます。人気の品はすぐに売り切れてしまうこともあるので、こまめにチェックしてみてくださいね。
- 住所: 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-4-16 原ビル2階
- TEL: 0422-21-8118
- 営業時間: 12:00~19:00
- 定休日: 火曜
- 公式サイト: http://www.sublo.net/
一期一会の本との出会いを「百年」に求めて
「36 Sublo」から徒歩で2分ほど、にぎわう吉祥寺の中心部にひっそりとたたずむ書店「百年」があります。自然光が差し込む店内は明るくて居心地のいい空間。初めて訪れる人でもすっと入りやすい雰囲気になっています。店内の9割を占める古書はとくにジャンルを決めることなく幅広く仕入れているそう。アート系、人文系など、ゆるやかにジャンル分けされた書棚を眺めているだけで次々と新たな世界に引き込まれていくかのよう。
新書はZINE(ジン)と呼ばれる個人制作の小部数本がほとんど。「百年」ではこの書店に置きたい・この本を置きたいという著者と書店の信頼関係を大切にしていて、他ではなかなか出会えない個性あふれる本が豊富にそろいます。店内では著者を招いたトークイベントなどが開催されるほか、壁面を使ったアート作品の展示も実施。「訪れる人に、自分の知らなかった景色や知識と出会ってほしい」との店主の思いが伝わってきます。
店名の「百年」の意味のひとつは、100年が1世紀という区切りであることに由来。古い世紀をリセットして新たな時代が始まるように、一度は誰かの手を離れ書棚で眠る本たちも、新たな読み手と出会うことで生まれ変わっていく、そんな本を取り巻く世界をイメージしているといいます。すぐ近くには姉妹店で「一日」という名のギャラリーと本のお店も。こちらでもクリエイターの展覧会と選りすぐりの本との出会いが楽しめますよ。
- 住所: 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2階
- TEL: 0422-27-6885
- 営業時間: 12:00~20:00
- 定休日: 火曜
- 公式サイト: http://www.100hyakunen.com/
いかがでしたか?武蔵野の自然と歴史を感じ、個性あふれるお店をめぐる吉祥寺さんぽ。大型商業施設だけでなく、駅前のエリアに小さなお店がぎゅっと詰まっているのも吉祥寺の魅力です。路地を歩いて、自分だけのお気に入りに出会う、そんな小さな心のぜいたくを楽しんでみてはいかがでしょうか。
取材日: 2023年7月6日〜7日
photo: 山下コウ太 / text: 佐藤史子
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