#02
旅気分と仕事を両立できる、
とっておきの東京。
日ごろ見る景色や、出会う人、仕事の内容なんて、そうそう毎日変化があるものではない。しかし、最近ではリモートワークも増え、自由な働き方や、新しい暮らしを求める人が多くなった。程よい距離感にリフレッシュできる場所を探していたのは、家ごはんで使える器や生活雑貨を日本中からセレクトするウェブショップ〈threetone〉を営む、松永剛さん・千晶さん夫妻。トレイルランニングやサーフィンを趣味に持つアウトドア派の2人がワーケーションに訪れたのは、東京本土唯一の村・檜原村(ひのはらむら)。“気軽に”豊かな自然で日常を変える、1泊2日旅に密着!
檜原村到着!まずは兜家旅館で、軽くPCワーク。
「実は東京の本土にひとつだけ村があるということを、最近になって知ったんです。村の9割以上の面積が森林っていう大自然なのに、八王子ICから車で50分! これなら世田谷住まいの私たちでも気軽に非日常を味わいに行けるかなって。そこに〈兜家旅館〉という、築250年を数える合掌造りの宿があるんですけど、調べたらWi-Fiも完備されていて、パソコンさえあれば仕事ができるから行ってみようかなと」(千晶)
ほんとに東京都!? と思わずにはいられないノスタルジックな田舎道を車で走り、〈兜家旅館〉に到着した2人。チェックインして案内された部屋の窓から見える緑の景色に思わず声を出して感動。窓を開けると、旅館のBGMかと疑いたくなるほど壮大な秋川渓谷を流れる川のせせらぎが聞こえてくる。これなら仕事もはかどりそう。まずは観光に出かける前に、軽くパソコンを開いて日常業務をこなす。
気分転換に、近くの滝まで。
心をリフレッシュする。
「よく趣味のトレッキングやサーフィンに遠方まで行くとき、2人で寄り道して滝を観に行くんです。檜原村は滝が豊富だというから楽しみにして来ました。滝の音や澄んだ空気には気を鎮める効果があるらしく、集中力も上がると思う。ワーケーションにもうってつけかもしれませんね」(剛)
陽が沈む前にと、2人は仕事を早々に切り上げて観光スポットの滝へと向かう。なんと檜原村には滝の名所が13か所も存在し、この日もハイキングやサイクリングで滝を巡る人が数多くいた。1日目に夫妻が訪れたのは、宿から車で3分の場所にある〈龍神の滝〉。滝口にムジナ(狸やハクビシンなどのアナグマ)が多く現れたことから、古くは“ムジナの滝”と呼ばれて親しまれたスポットだ。
宿に戻って、ゆったりとした時間を
贅沢に過ごす。
「調べると、檜原村は“都内唯一の秘湯”なんかもあったから、実は1泊2日ではとても遊びきれないほど奥が深い。明日は日本の滝百選に選ばれた滝や、レストランへ。キャンプ場もあったり、気になるところがまだまだあるから、またすぐ来ることになりそう(笑)」(剛)
2日目、日本の滝百選にも選ばれた
〈払沢の滝〉へ。
東京都で唯一、日本の滝百選に選ばれた〈払沢の滝〉。落差は4段で約60m。最下段(落差約26m)の落ち込みにある深く美しい淵は一見の価値あり。駐車場から滝までの15分の道のりも心洗われる。
●東京都西多摩郡檜原村本宿。
翌日は早朝から軽いPCワークをこなして、旅館をチェックアウト。車を走らせること30分ほどでたどり着いたのは、落差62m・全4段からなるスケールの〈払沢(ほっさわ)の滝〉だ。東京都で唯一、日本の滝百選の滝を観られるスポットとあってなかなかの賑わいを見せる。上質な空気、豊かな緑、涼しい川の音に加えて、村の木で作られたウッドチップが道中に敷かれていてフワフワ。駐車場から滝まで15分ほどのトレッキングロードがこれまた何とも心地いい。冬場は凍りついた滝を見ることもできるそうで、名所と呼ばれるだけの貫禄がある。
滝までの道中にある、陶芸品を扱う
ギャラリー喫茶。
「しっかりと作られているのが見て取れるのに、あまりに安くてびっくり。いつも旅の思い出に何か買うのですが、今日はついつい2つ買っちゃいました(笑)。このギャラリー喫茶のほかに、昔の郵便局の建物を利用した土産物店もあったりして、やっぱりほかにも気になるところがいっぱいです」(千晶)
檜原野菜を使った人気レストランでランチ。
地元で生まれた物が集まった土産屋で、最後まで檜原を満喫。
「檜原村にあるものは、本当に大切に残されてきているし、品物もひとつひとつ丁寧に作られている。いろんなものを目にしたから随分遠くまで旅しに来たような気分だけれど、ここは東京都なんですよね。車を走らせて2時間もかからないうちに世田谷に着くか思うと、なんだか不思議な気持ちです」(千晶)
1泊2日で檜原村の隅々まで楽しんだ松永さん夫妻だが、やっぱりまだまだ訪れたいスポットがあった様子。例えば飛行機に乗って遠くまで旅するとなると、なんとなく仕事が心配だけど、こんなに近場で非日常な旅気分が味わえるとなれば、来ない手はない。「ワーケーションを名目に、またすぐ遊びに来ることになりそうだね」と2人は笑顔で帰路についた。
photo/ Koh Akazawa text/ Naoto Matsumura
「BRUTUS.jp」より転載